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安藤美姫とマリア・シャラポワ

安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/15

安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/15_c0065429_538059.jpg ◇新コーチの驚き

 リンクサイドのキャロル・ヘイス・ジェンキンス(65)が驚きの声を上げた。「ビューティフル(美しい)、ゴージャス(華やか)」。米クリーブランドに戻った翌日、安藤美姫がフリーのプログラムを披露した時だ。カナダ・トロントにいる振付師、デビッド・ウィルソン(40)に感謝の気持ちを伝えずにはいられない。その場で携帯電話をかけ始めた。

 へイスが興奮を隠せなかったのには訳がある。安藤がトロントに向かった後、ウィルソンから送られて来たフリーの音楽を聴いて、心配になった。バイオリンとピアノだけで旋律を奏でるバラード。「これは難しい。あまりにも静か」。強弱がはっきりとした交響曲を準備し始めたほどだ。

 フィギュアスケートは曲調に変化をつけて演技を盛り上げる。体力のある序盤は難度の高いジャンプが入るためアップテンポ。中盤でスローに落として情感豊かに滑った後、終盤のクライマックスに持っていく。強-弱-強が一般的だ。

 ウィルソンは振り付けで抑揚を求めた。優雅さ、繊細さ、女性の強さを表す動きを盛り込んだ。

 2週間ぶりの再会を前に、安藤は「早くキャロルに会いたいけど、緊張する」と話していた。イメージを大きく変えつつある自分が、どう映るのかが、気になる様子だった。

 ウィルソンの期待に安藤は応えた。得意のジャンプを省いた構成でも、ヘイスにはあっという間の4分間だった。昨季と比較して「とても同じ選手とは思えない」とヘイス。安藤は「プログラムを気に入ってくれて良かった。もっと感情を込めて踊れるようにしたい」。杞憂(きゆう)に終わったことに2人とも安堵(あんど)した。=敬称略=つづく<文・張智彦/写真・貝塚太一>

毎日新聞 2005年6月1日 大阪夕刊
by markzu2B | 2005-06-02 23:39