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安藤美姫とマリア・シャラポワ

安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/13

安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/13_c0065429_1504645.jpg ◇遊び感覚から「切り札」

 トロントでのプログラム作りは順調に進み、安藤美姫は機嫌がよかった。

 「美姫にとって4回転? うーん、くせ者かな。でも、ジャンプを取ったら何も残らない」。注目され過ぎるのが嫌で、口を閉ざすこともあった大技。難しいけれど、「切り札」にしたいという気持ちを独特の言い回しで表現する。

 それは「遊び」から生まれた。オリオンクラブに移籍した中学2年から安藤は4回転を跳んで着氷できるようになった。「遊び半分でやってたら、できた」。周囲の選手やコーチの声も聞こえないほど集中した。指導していた小塚幸子(49)は当時、「美姫ちゃんの言う『遊び』は自分が面白いと思うこと。本当に遊んでいて4回転は跳べませんよ」と話していた。

 02~03年シーズンは足を痛めて約3カ月間、氷の上での練習ができなかった。その間、筋力トレーニングに励んだことでジャンプに力強さが加わった。リンク外での体作りの重要性も痛感して「けがは悪いことばかりじゃない」と笑う。

 ジュニアGPファイナル(02年12月、オランダ)で初めて4回転に成功する。ギネスブックに名前が刻まれた快挙にも「できるはずのことができなかった。そんなに騒がれても……」と困惑した。他のジャンプを失敗するなどして3位に終わった悔しさが残った。

 以来、足りないものを一つずつ身につけてきた。表現力、試合への入り方……。今では「みんなが楽しみにしてくれるし、真っ白な気持ちで挑戦したい」。

 新プログラムを滑り込み、ジャンプを磨く。新コーチ、キャロル・ヘイス・ジェンキンス(65)の待つ米クリーブランドに戻る日が近づいている。=敬称略=つづく<文・張智彦/写真・貝塚太一>

毎日新聞 2005年5月26日 大阪夕刊
by markzu2B | 2005-05-27 23:00