安藤美姫17歳 ’06トリノ五輪へ/5
どうすれば愛弟子の魅力を最大限に引き出せるか。安藤美姫を指導するキャロル・ヘイス・ジェンキンス(65)は、スケーターを彩る衣装のデザインにも思いを巡らす。
練習2日目の今月3日、安藤は昨季の衣装を持ってリンクに行った。赤と黒の2着。そのうち、ショートプログラム用の赤を実際に身につけてみた。練習着姿では分かりにくい試合本番の雰囲気や体のラインを知ってもらうためだ。間もなく演技のプログラム作りが始まる。それにふさわしい衣装のイメージを膨らませる狙いもある。
「私も赤が大好き。(60年スコーバレー)五輪は赤いコスチュームで優勝した」と好きな色が安藤と同じことをヘイスは喜んだ。注文も忘れない。「もう少しほっそりした方がいい。飾りはあまり必要ない」。ヘイスの考える「エレガンス」は内面からにじみ出るもの。その上で安藤の持ち味である躍動感や力強さをいかにアピールするか。
プログラム作りはコーチの仕事ではない。「プログラムの内容も衣装のことも、振付師とよく意見交換したい」というヘイスに安藤は「いろいろなところに気を配ってくれる」と話す。
米クリーブランドでは、五輪シーズン用の新しい靴で滑り始めた。昨季は革が分厚くて硬めなものを使った。そのため1年に5、6足は履きつぶしていたのが3足で済んだ。ただ、関係は不明ながら、右足甲の故障に苦しんだ。「どんな小さな不安要素も消したい」と軟らかめに。「スケーターの体の一部」と言われる靴は23センチの足になじみつつある。
8日午後、安藤は新しい振付師の待つカナダ・トロントに向かった。=敬称略=つづく・次回は16日<文・張智彦/写真・貝塚太一>
毎日新聞 2005年5月13日 大阪夕刊